環境省 廃棄物・リサイクル対策部
廃棄物対策課長 粕谷 明博
 
 

 環境省の廃棄物対策課長の粕谷です。本日は、われわれ環境省として行っている施策をご紹介し、あわせて工業会会員の皆様にはこういう方向で頑張っていただきたいというお話をしたいと思っています。                
 お手元にお配りした資料は既存の資料から準備しましたが、歳出改革ということが今叫ばれていて、自民党の中で公共事業など各分野でどのように歳出を減らしていくかということが議論されております。その中で、環境省のほうから廃棄物関係、リサイクル関係の施設整備についてこういう重要性があるので、引き続き削減しないでくれというようなことを説明した資料を持って参りました。この資料を用いて主にわれわれがどういう施設整備をしようとしているのかということをまず最初にお話ししたいと思います。

◇補助金制度から交付金制度への転換の意義
 ご承知の通り、昨年から単品というか個々の施設の整備に対する支援という従来型の補助制度から、総合的な地域作りに対する支援を行うということで交付金制度に改めたわけですけれども、そのことを改めて整理したのが「わが国における廃棄物処理施設整備のこれまでの役割と新たな意義」という資料であります。
 廃棄物処理というものの原点が公衆衛生というところにあるわけでございますので、施設整備についてもいかに公衆衛生の向上を図るか、そのための社会資本をあまねくわが国において整備するということで対策を進めてきたわけです。従ってその成果というものも公衆衛生の向上ということで焼却処理率の向上だとか公害問題の解決、あるいはその中で出てきたダイオキシン対策の徹底といったようなことに成果が表れて参りまして、地域単位、市町村単位でどのように適正処理を進めるのかということが中心でありました。
 もちろんその一環としてというかその中で広域的という考え方も進めてきたわけですが、ベースは市町村の処理をどうするのかというところにあったわけであります。また、こうした部分、これは技術的にも施設的にも各市町村に相当定着してきたといえます。今後国が支援をするのはどういう場合に行うのかということを改めて考えたときに、各自治体で行っている、標準的に行っているもの、あるいはそれが定着しているようなものは自治体の一般財源で行うべきというのが国からみた一つの考え方であります。
 だから、単純に公衆衛生の向上を図る部分というのはもうそれは自治体にお任せすればいいのではないかというのがベースにありまして、それでは国としてどういうことをやっていくのかということが、右のほうにありますように循環型社会をどう作るのかというのが新たなテーマとしてあるわけであります。一つのキーワードのようにいろいろ最近言っているのがその四角の中にありますように、これからはごみから資源とエネルギーを回収し尽くすという、つまり尽くすというのは、これまで回収するというのをやってきたのですが、それを更にとことんやれないかなというような方向に持っていきたいと思っているというのが今の状況であります。

◇画一的な施設から複合・最適の組み合わせ施設へ 
 循環型の社会を作っていくというのはもちろん発生の抑制から再使用、再生利用にいたるまで様々な部分がありますけれども、こうしたものを進めていくうえでの基盤となる施設を作る。そのための交付金制度として新たに政策を位置付けているわけです。従って、17年度にスタートした交付金の制度を18年度にも一部充実致しましたし、更に19年度に向けて改革を進めていこうとしているわけです。この場合も、循環型を作る資源、エネルギーの回収をどう高めるかという基本ラインをはずれて新たな制度を作っていくということにはならないのかなというふうに思っています。新しい制度を作るときに、この資源、エネルギー回収を高めるということについて、「何か具体的な、こうすればもっとすごいことができるというようなことがあればどんどんそうしたものは制度に取り入れていきたいというふうに思っている。」ということが冒頭申し上げたいことでございます。
 次のページに参ります。今申し上げたような観点から循環型の交付金制度を作りました。17年度にスタートして全国の市町村から、相当使い勝手が良くなったという高い評価を得ているところですけれども、この図にありますように従来の補助金を廃止した分野は黒くハッチが掛かっている所であります。単純な処理というものから3Rの推進に資する事業に限るということ、それからエリアについてもより広域的に進めるというところに限るということにしています。
 交付金の対象事業、白く残っている所ですけれどもマテリアルリサイクルだとかエネルギー回収などであります。このマテリアルリサイクル推進施設だとかエネルギー回収推進施設だとかバイオマスうんぬんとしたのは平成18年度からです。従来の補助金の中で、例えば熱回収施設だとかリサイクルセンターだとかごみ固形燃料化施設だとかいろいろな個別の施設のメニューが残っておりましたけれども、そうした個別施設のメニューを交付対象にするというところを廃止致しまして、大きく括ってしまったということであります。
 例えばこのマテリアルリサイクル推進施設という中でいろいろなマテリアルのリサイクルをするような設備であれば、様々な設備が対象になります。従ってどういう設備を作るのかということは画一的なものではなくて、こういうものしか支援できないわけでないので、「ある町についてはこういう設備とこういう設備を組み合わせる、別の町についてはまた別の設備の組み合わせ」ということがあるのかなと思っています。出来合いのものを選ぶのではなくて、いろいろな設備、装置、施設と言ってもいいのかもしれませんけど、そういう中で最適の組み合わせをやってもらいたいという思いでこのようなかたちでメニューの統合をしました。
 従って計画、構想の段階からどう作っていくのかというアイデアをどんどん勝負していただきたいと思います。コンサルタントの方々は必ずしもハードそのものに強くないかもしれないけれども、そうしたアイデアをうまく練ることができるかもしれないし、各プラントメーカーの皆さんも、自分たちが持っているいろいろな技術を組み合わせればこういうことができるというかたちでのプレゼンテーションをどんどんやっていただきたいというつもりでこういう制度に組み替えています。
 後ほどお話ししますけれども、施設整備にあたっての発注・契約の考え方というところも従来の価格競争からできるだけ総合評価落札という方向にシフトしていこうというつもりで、今リポートをまとめておりますので、そうした意味からも知恵をどう出していくのかということで競争ができればいいなと思っているということでございます。

◇重点整備目標とバイオマスの推進
 こういうかたちで補助制度を交付金に組み替えたわけですけれども、次のページにあるのはまだまだやらなければいけないのはどんなことかという意味で、国会の先生方に訴えるための資料であります。例えばダイオキシン対策はものすごい効果を示したわけでありますけれども、こんなに成果が出ましたというPRをするだけだと「ごくろうさんでした。もう終わりましたね」と言われてしまいますので、これからまだまだこんなことをやらなければいけないということも訴える必要があります。
 二つあって、一つはリサイクル率をまだまだ上げなければなりません。これは国の廃棄物処理の目標に定めている平成22年度24パーセントというものの達成のためには、現状に比べれば更に1.3倍の施設能力が必要だということでありますし、発電ということでは、京都議定書の目標達成計画を確実に履行するためにはごみ発電をさらに1.7倍に増やさなければいけない。こうした背景があって、そのための施設整備に重点を置きたいというようなことを広く訴えているところでございます。単純に燃やす、あるいは単純に埋めるということではなくて、いかにこれらの目標達成率を上げるかということに重点を注ぎたいということであります。
 こうしたことで交付金の運用をしているわけでございますけれども、そのために例えばごみ発電をもっとやるため、もっと積極的に発電能力を引っ張り出していくためにどういうことをやったらいいのか。いろいろなアイデアがあろうかと思います。ボイラー温度の工夫による発電アップなのかあるいはごみ発電の買電の単価を変えるべきなのか、いろいろなアイデアがあるわけですけれども、そうした提案をどんどん受けながら、あるいは意見交換をしながらこうしたところの充実を図っていきたいと思っているのが施設整備に関する今のわれわれのポジションであります。
 そのため、来年度に向けていろいろ考えている事項の一つが、いろいろな人の目が向いているバイオマスの観点であります。次のページに参りますけれども、各種リサイクルの制度というものを考えたときに、いろいろな個別のリサイクル法を作ってきたわけです。容器包装、家電、建築解体物、自動車、いろいろなことをやってきましたけれども、そうしたいろいろな個別のリサイクルが進んでいくとどうしても残ってくるのが生ごみで、そのリサイクルをどうするのかというのが大変大きな課題だと思っています。
 事業系の生ごみ、一般廃棄物とあわせて産廃の動植物性残渣と言われているものなどを対象として食品リサイクル法という法制度があるわけですけれども、ちょうど食品リサイクル法の見直しも次期通常国会で行うというスケジュールになっていますので、そうした問題と家庭から出る生ごみ等のバイオマスをどうリサイクルをしていくのかというのが大きなテーマであります。政府全体としてもバイオマスの問題、あるいは新エネルギーのような問題というのが大きくクローズアップされています。われわれ自身もこの分野に積極的に加わっていかないと、やはり取り残されてしまうのかなということもございまして、今でも高効率のメタン発酵について交付金の割合は2分の1ということで高めていますけれども、その分野で何かほかにもっとやることがないかということを今検討会等で検討しているところであります。
 生ごみを中心とする食品廃棄物だけでなくて、家畜糞尿、下水汚泥あるいは木質系の廃棄物というところまで視野に入れて、廃棄物処理、リサイクルの世界でエネルギーなり資源を回収し尽くすような、総合的なシステムが作れないのかなと思っています。そのようなかたちでエネルギー回収を進めていけば、資源循環ということに加えて温暖化対策にも役立つことができるのかなと思っている次第です。

◇循環型社会構築と脱温暖化社会対策の統合
 環境行政の二本柱ということで、循環型社会の構築と、脱温暖化対策ということが言われていますけれども、この二つを統合していく施策が環境省にとって最重要の施策になるのかなと思っております。
 予算的にも地球環境関係でいろいろな予算があります。石油特会の予算を利用した支援制度もあります。廃棄物の側でエネルギーを作り出すようなことを行って、地球温暖化対策、石油特会のほうでそうしたエネルギーを使う施設を整備するとか、そうした省の中でいろいろ連携を取って、循環型社会と温暖化対策を統合するような施策を来年度何かできないかということで、今考えているところです。
 そうした技術に何があるのか、アイデアはあるけれどもそうしたアイデアを実現するための技術として、各プラントメーカーの皆さんがどんなものを持っておられるのかということをどんどん教えていただきたいと思っています。なかなか頭でっかちで、こういうことをやりたいということが先行しても実際にそれができる体制がなければ何にもなりませんし、更にそうした新しいアイデアを実現したいと考えている市町村、日ごろのお付き合いの中でこういう市町村がこんなことを考えているよという情報もどんどんお寄せいただきたいと思っています。それによってわれわれも新しい施策を考えて、それが実現可能性があるものになっていくのかなと思っています。いろいろな場で意見交換をさせていただきたいと思っているところでございます。

◇建設発注の適正化
 今日お手元にお配りした資料、残りのほうは浄化槽とかPCBとかいろいろな話があります。おしまいから3枚目の所に少し毛色の違う資料を入れてあります。これは別に与党に出した資料ではないのですけれども、先程申し上げました「施設の建設工事にかかわる入札・契約の適正化に向けた検討」ということで、昨年の秋ぐらいから検討を行って、検討会そのものは3月30日の最終回を経て終わっているのですけれども、今、最終取りまとめ中ということでありまして、国交省あるいは総務省、更には公正取引委員会にそのリポートの中身のチェックをしてもらっている段階で、もうまもなく、まとめられるかと思います。
 その中で、より競争性を高めるために廃棄物処理施設制度に則した総合評価落札方式を導入すべきだとか、PFIのような施設の建設と維持管理を一括した価格競争を求めるべきとか、せめて公募型の指名にすべきだとか、あるいは建設コンサルタントについて、価格競争だけではなくて技術力、プロポーザル方式で選ぶべきだとか、あるいはコンサルタントの中立性を確保するために、発注事務の支援を行うコンサルタントと、基本設計を行うコンサルタントに分けるべきとか、そういったことを提言していきたいと思っております。
 われわれ自身が市町村を支援するためにさまざまなデータベース、発注情報というか契約情報を整備するとか、いろいろなマニュアルを作るとかそういうことをやっていきたいと思っております。市町村を支援する組織、どういう組織になるのかまだ答えが出ているわけではありませんけれども、公正中立的な立場に立ち、大都市の技術者なんかによって専門家集団のようなものができないかなと思っています。そうした人たちが市町村の施設整備を支援するということができないのかなとかいろいろなことも考えていきたいと思っているところでございます。こうしたことでより競争性を高めて市町村により良い施設を保有してもらうようにしたいということを考えているということであります。

◇調査研究の推進
 それから最後の話題の二つ目でありますけれども、いろいろな場でプラントメーカーの方、あるいはコンサルタントの方がいらっしゃるときには申し上げるようにしているのですけれども、環境省で廃棄物処理等科学研究費補助金という制度を持っています。 基礎的な研究を行う廃棄物処理対策研究は定額10分の10でありますし、右側の次世代廃棄物処理技術開発は補助率2分の1ということで、もうちょっとで実用化されそうな技術を支援するということをやっています。平成18年度の予算は13億円ございまして、これについては既に公募してほとんど配布をしておりますので今更ということでありますけれども、ぜひこの予算に対して積極的にトライをして、有効に使っていただきたいということであります。
 研究開発は各社ともなかなか厳しい状況にあろうかと思いますけれども、やはり廃棄物処理・リサイクルの分野が元気であるためには、新しい技術でどんどん世の中を変えていくということが大事ではないかなと思っています。必ずしもハードそのものだけではなくて、ソフトな研究もございますし、ハードもいろいろな分野にわたっています。 こうしたことにどんどんトライをしていただきたいと思っている次第であります。
 最後のページは、環境省のホームページにクリックしていくとこういう所が出て参ります。これまでどんなものに交付をしてきたか、補助をしてきたかということが出ておりますので、お時間のあるときに見ていただいて、この程度の研究だったらわが社もできるよというようなプライドで、どんどんチャレンジをしていただきたいと思っております。そうした研究を通じて新たな施設整備、新たなリサイクルの手法というものが開発されて、それが政策につながっていくということだろうと思います。
 その研究のやり方についてはいろんなやり方があろうかと思います。こういう工業会のような場で研究チームを作るやり方もありましょうし、単独のメーカーで応募していただくやり方もあろうかと思います。あるいはプラントメーカーと廃棄物研究財団や全都清、あるいはプラントメーカーさんと特定の○○市という市町村といった形で連携してやるという方法もあろうかと思います。それにしても公募がないとなかなかそういうわけにもいきませんので、積極的に応募していただきたいと思っているということであります。

◇廃棄物会計の標準化と事業水準の指標化
 それから、表紙の所に「その他の話題」ということが書いてありまして、今年何をやらなければいけないかという点について、まだお話しできていません。
 時間の関係で少々省略致しますが、今年もう一つやりたいと思っているのが、廃棄物会計の標準化と各都市の事業水準の比較ということであります。市町村のごみ処理事業、し尿処理事業というのは、いくらかかっているのかというのがあまりきちんとしたかたちでデータが整理されておりません。役所の会計ですから入りと出だけであって、いわば複式の企業会計を取っていないものですから正確な意味でのコストというものは算定できませんし、各都市がどれだけ今資産を持っているのかというのも表せない状態であります。
 容器包装リサイクル法改正の議論の中で産業界に市町村の分別収集費用の負担を求めるということが随分行われたのですけれども、そもそも市町村でいったいいくらかかっているのか、丼勘定のままでは産業界としてもとても負担できないという議論があります。こうしたことも踏まえて、一応共通の物差しで各都市の処理コストを比較できるようにしたいと考えています。いくらかかっているのかというのが出るようにしたうえで、あわせて各都市の事業水準(パフォーマンス水準)というものを指標化できないか。それは事業の効率性ということだったり、あるいはリサイクルの程度だったり、ごみの発電量だったりいろんなことがあるかもしれませんが、コストに対して、事業水準というものを比較することで、どの都市がどういう事業に力を入れているのかということがお互い比較できるのかなと思います。そうしたやり方をすることでそれぞれの都市の特徴にふさわしい事業展開というものができるのかなというふうに思っております。
 こうしたものがあれば、今度は、逆にそれぞれのプラントメーカーの皆さんもここの都市はここが弱そうだよねという話が客観的に見えるかもしれません。そうしたビジネスの展開、提案のポイントになるかもしれないなというふうに思っておりますし、市町村同士がお互い比較し合うことで、より高いレベルを目指していただくこともできるのかなというふうに思っている次第であります。アスベストの問題もいろいろご協力をいただきたいテーマですし、災害廃棄物の問題もちょっとこれから検討しなければいけないと思っている次第でございます。
 いずれに致しましても、循環型の社会を作っていくというのはそのソフトな政策、住民の協力という部分と、制度を作っていくという部分、それから具体の処理施設でもってその基盤を整備するという両輪があってはじめて動くものだと思っています。その両輪の整備をいかに公明正大に、あるいは効率的に進めていくのかということが求められているのであろうかと思います。その基盤を皆さん方にきちんと作っていっていただきたいというふうに思っている次第でございます。
 非常に雑駁になりましたけれども、私のお話とさせていただきます。どうもありがとうございました。

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